イケメンカフェに迷い込んだ話【後編】
この記事は昨日の記事の続きです。
先に前編を読むことをオススメいたします。
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「お待たせしました〜」
魅惑のイケメン気まぐれ水を作り終えたAさんが戻ってきた。
「こっちは、ウイスキーとピーチリキュールを炭酸で割ってみました!」
恐らく私の好みに寄せてくれたんですね。オリカクっぽいオリカク、ありがとうございます。
え…?!?!
我々は、魅惑のイケメン気まぐれ水を注文したハズでは…?
友人と困惑していたら、Aさんが「ファジーネーブル、嫌いですか?」と不安な顔をしていた。なんとAさんは、気まぐれにファジーネーブルを提供してくれた様子だった。が、そうじゃない。いや、そういうことじゃないだろ。え?なんで?
ファジーネーブルは、全然気まぐれ水じゃないと思った。「魅惑のイケメン気まぐれ水」が何たるかを知らない我々にも、それだけは分かった。これは、大学生が初めて飲むようなド定番カクテルのはず。というか、普通のカクテルとして頼めるものでは?
ファジーネーブルが飲みたかったら、ファジーネーブルを頼んでいたんだよ。なぜ気まぐれ水を頼んだか、お分かりか?
我々は、普通のカクテルと200円違うぶんの「何か」が欲しかった。最悪ファジーネーブルだったとしても、ファジーネーブルとは言わずに出して欲しかった。これが俺の気まぐれ水、という顔で提供されたら、どんなに知っている味でもそれは「魅惑のイケメン気まぐれ水」なのに。ほんのちょっとでもいいから、そういう工夫が欲しかっただけなのに…。
我々の繊細なオタク心は、Aさんに伝わっていないようだった。
しかし前述したとおり、ウケたら負け。
我々は魅惑のイケメン気まぐれ水とファジーネーブルを嗜み、僭越ながらイケメンとお話をさせて頂いた。
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Aさんのお話によると、どうやらこのお店のスタッフは「芸能活動をしているイケメン」が多いとのこと。我々はAさんにメンズアイドルなんですか?と質問すると、彼の所属していたアイドルグループは最近解散してしまった、とのことだった。今はこの店でアルバイトをしながら、次の機会を探っているらしい。
友人が「こんなにカッコいいのに、今はアイドルじゃないなんて勿体ない…」と言うと、Aさんは即座に「またアイドルやったら、推してくれますか?」と可愛らしい笑顔で切り返してきた。
さすが元アイドル、その一言に尽きる。私も友人も「え?!」と声が出た。本日何度目かの「え?!」。
いや、会話開始3分、いきなり釣りにこられると思わなかった。我々は自分に自信があるタイプではないので、こういうことは言えない。オブラートに包まず言うならば、こんな烏滸がましい台詞は吐けないのだ。(かくいう私も元アイドルなのだが。あれ?)
しかしイケメンに言われたおかげなのか、まったく嫌味に聞こえなかった。こんな台詞を言ったら相手に失礼だろう、みたいな自己肯定感で生活していたので、不快感のなかったことにビックリした。あまりの感動に、スマホに「・釣る一言を最初の方に言うと良い」とメモした。勿論いまだに一度も実践出来ていない。
ちなみにビビった友人は「そんな言い方されたら断れないじゃないですか…!!」と素直に押しの弱さをアピールしてしまっていた。チョロいね。
その後もAさんからいろんなお話を聞いた。Aさんは自称陰キャなこと(綺麗なイケメンの陰キャアピールってこんなに嘘臭いんだなと思った)。彼の元いたグループは、私の知人が運営しているグループだったこと(そんな偶然あるか?)。
滞在時間は30分弱と短かったが、Aさんと話す時間は新鮮で面白かった。なによりも、シンプルに「今、私はイケメンカフェにきているな」と思わせてくれる、スタンダードなイケメンだったような気がする。秋葉原の超王道メイド喫茶に行ったら、店舗オリジナルの可愛い愛込めをしてくれた時のような安心感があった。(わかりづらい例えですね)
Aさんは帰り際に「次は時間に余裕持ってきてくださいね!ぼくの出勤、見てくださいね♪」と言っていた。そういうところも高評価だった。
終始一貫して「ボクのファンになってね♪」という態度を崩さないストイックな姿勢。(しかしオリカクはファジーネーブル)
きっとコンカフェで働いている人からしたら、こういうのって当たり前のことなんだろうな。私は慎重に人と仲良くなるタイプだから、なかなか出来ないのだ。ファン獲得の為に強気の姿勢で頑張っているAさんは偉いな、と思った。見習わないといけませんね。(しかしオリカクはファジーネーブル)
イケメンカフェを退店後に、私が友人と出した結論は「イケメンだからなんでも許される」だった。身も蓋もない。
でも、そういう空気感ってあるじゃないですか。勝手に自分のオリカクを作ってきても、そのオリカクがファジーネーブルでも、出会って3分で即営業でも、全部許されるような空気を持ったイケメンだった。かなりずるい。イケメンというだけで、なにやったって「可愛い」「優しい」「面白い」になるのだから…。
私は全然イケメンが好きなわけではないが、それでも彼は魅惑のイケメンスタッフだったように思える。悔しいけど、そうだったのだ。
友人と解散した後のLINE
まあ不思議なことは多々あったけど、面白かったので行って良かった。それですべてよし。新しい文化に触れて刺激を受けすぎた我々は、謎の疲労感からか、外国人観光客がたくさん集まるゴールデン街に向かった。異文化交流が捗った一日になった。
そういえば、イケメンカフェを出てすぐに私の職場に寄った。酔っ払ったまま、店長にイケメンカフェのことをたくさん話した。
興奮気味の友人が「魅惑のイケメン気まぐれ水」のことを「イケメンの愛液迸る魅惑のオリジナルカクテル」みたいに言い間違えたので、店長が大困惑していた。
すみませんでした。